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投稿日: 2026年5月28日

~個人事業主・中小企業経営者のための退職金制度~

1.小規模企業共済の概要

小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者や役員が、将来の引退や廃業に備えて積み立てを行う「退職金制度」です。独立行政法人である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、国の制度として高い信頼性を持っています。

会社員の場合、一般的には退職金制度や企業年金がありますが、個人事業主や小規模企業の経営者や役員にはそれらが十分に整備されていないケースが多く見られます。そのため、自ら将来の資金を準備する必要があります。小規模企業共済は、こうした方々のために用意された制度です。

「経営者のための退職金制度」とも呼ばれ、節税効果と資産形成を同時に実現できる点が大きな特徴です。

2.加入できる人

小規模企業共済は、すべての事業者が加入できるわけではなく、一定の条件があります。主な加入対象者は以下のとおりです。

  • 個人事業主(常時使用する従業員数が一定以下)
  • 会社等の役員(取締役、業務執行社員など)
  • 共同経営者(一定の要件を満たす場合)

業種によって従業員数の上限が異なり、例えば商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)では5人以下、製造業や建設業などでは20人以下といった基準が設けられています。

このように「小規模企業者」であることが前提となるため、加入前には自社が条件を満たしているか確認が必要です。

3.掛金の仕組み

掛金は、月額1,000円から70,000円までの範囲で自由に設定することができます(500円単位で設定可能)。また、経営状況に応じて増額・減額も可能です。

特徴的なのは、掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になる点です。つまり、支払った掛金分だけ課税所得が減少し、所得税・住民税の負担軽減につながります。

例えば、年間84万円(7万円×12か月)の掛金を支払った場合、その全額が所得控除となるため、高所得者ほど節税効果が大きくなります。

また、掛金は口座振替で支払う仕組みとなっており、計画的に積立ができる点もメリットです。

4.共済金の受け取り方

共済金は、主に以下のような事由が発生した際に受け取ることができます。

  • 廃業した場合
  • 会社役員を退任した場合
  • 加入者が死亡した場合
  • 老齢給付(原則65歳以上で一定期間以上加入)

解約した場合、受け取り方法は以下の3種類があります。

(1)一括受取

一度にまとめて受け取る方法です。退職所得として扱われるため、税制上の優遇があります。

(2)分割受取(年金形式)*一定の要件を満たす必要があります

一定期間にわたり分割で受け取る方法です。公的年金等の雑所得として扱われます。

(3)一括受取と分割受取の併用 *一定の要件を満たす必要があります

一部を一括で、残りを分割で受け取る方法です。

税務上は、一括受取りの場合は「退職所得控除」が適用されるため、税負担が軽減されるケースが多く、受取方法の選択は非常に重要です。

*解約をした場合は、解約時の年齢によって所得が変わります。

65歳以上・・・退職所得扱い

65歳未満・・・一時所得扱い

5.小規模企業共済のメリット

小規模企業共済には、以下のようなメリットがあります。

(1)高い節税効果

掛金全額が所得控除の対象となるため、所得税・住民税の軽減につながります。これは他の制度と比較しても非常に大きなメリットです。

(2)安全性が高い

国の制度であり、中小機構が運営しているため、安心して長期積立ができます。

(3)将来の資金準備ができる

退職金がない経営者にとって、計画的な老後資金の確保が可能です。

(4)貸付制度が利用できる

積み立てた掛金の範囲内で、低利の貸付制度を利用できます。急な資金ニーズにも対応できる点は大きな魅力です。

6.注意点・デメリット

一方で、以下のような注意点もあります。

(1)短期解約のリスク

加入期間が20年未満で任意解約した場合、元本割れとなる可能性があります。長期加入が前提の制度です。

(2)資金拘束がある

積み立てた資金は基本的に自由に引き出すことができません。そのため、資金繰りに余裕を持ったうえで掛金を設定する必要があります。

(3)課税関係の理解が必要

受取時の課税方法は選択肢によって異なるため、事前に税務面をしっかり検討することが重要です。

7.iDeCoとの違い

よく比較される制度に「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がありますが、主な違いは以下のとおりです。

  • 小規模企業共済:事業者向け、元本が比較的安定、貸付制度あり
  • iDeCo:20歳以上60歳未満の国民年金加入者であれば加入可能、運用商品を選択、運用リスクあり

どちらも節税メリットがありますが、制度の目的や仕組みが異なるため、自身の状況に応じて使い分けることが重要です。

8.まとめ

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者や役員にとって非常に有効な制度です。掛金の全額所得控除という大きな節税メリットに加え、将来の退職金準備ができる点は大きな魅力といえるでしょう。

一方で、長期加入が前提であり、途中解約による元本割れなどのリスクもあるため、加入にあたっては慎重な検討が必要です。

経営者は事業の成長だけでなく、自身の将来設計も重要です。小規模企業共済を上手に活用し、安定した将来の資金基盤を築いていきましょう。

                監修:佐藤 拓真