メインコンテンツにスキップ

埼玉東部会計事務所 公式サイト

投稿日: 2026年7月31日

はじめに

近年、人材確保や福利厚生の充実を目的として「従業員社宅制度」を導入する企業が増えています。特に都市部では住宅費の負担が大きく、住宅支援は従業員にとって魅力的な福利厚生の一つとなっています。

しかし、社宅制度は単に会社が家賃を負担すればよいわけではありません。税務上のルールを理解せずに運用すると、従業員への給与課税が発生する場合があります。

この記事では、従業員社宅の概要やメリット、税務上の取り扱い、導入時の注意点について詳しく解説します。

従業員社宅とは

従業員社宅とは、会社が所有または賃借した住宅を従業員に貸し出す制度です。

社宅には大きく分けて次の2種類があります。

借上社宅

会社が不動産会社や大家から住宅を借り、それを従業員へ貸与する方法です。

現在、多くの企業で採用されているのがこの借上社宅制度です。

会社が直接物件を所有する必要がないため、初期投資を抑えながら福利厚生制度を整備できます。

自社所有社宅

会社が所有する建物を社宅として従業員へ貸与する方法です。

以前は大企業を中心に見られましたが、維持管理費や資産保有コストの負担が大きいため、近年は借上社宅へ移行する企業が増えています。

社宅と住宅手当の違い

住宅支援制度には「社宅」と「住宅手当」があります。

社宅

会社が住宅を用意し、従業員へ貸与する制度です。

一定の要件を満たせば、会社が負担する家賃相当額について従業員に所得税が課税されないというメリットがあります。

住宅手当

毎月の給与に上乗せして支給する手当です。

支給額は全額給与として課税対象になります。

例えば毎月3万円の住宅手当を支給した場合、その3万円は給与所得として所得税や住民税の計算対象となります。

一方、適正な社宅制度を利用すれば、同程度の住宅支援であっても税負担を軽減できる場合があります。

従業員社宅のメリット

1. 従業員の住宅費負担を軽減できる

最大のメリットは、従業員の住居費を抑えられることです。

特に都市部では家賃負担が大きいため、社宅制度の有無が就職先選びの重要なポイントになることもあります。

若手社員や転勤者にとっては大きな魅力となるでしょう。

2. 人材確保や定着率向上につながる

福利厚生が充実している企業は採用活動でも有利になります。

求人票に「借上社宅制度あり」と記載できれば、応募者へのアピール材料になります。

また、住宅費の負担軽減により従業員満足度が向上し、離職率の低下も期待できます。

3. 会社と従業員の税負担を軽減できる

住宅手当を給与として支給すると、所得税や社会保険料の対象になります。

一方、税法上の要件を満たした社宅制度であれば、会社負担部分に課税されないため、従業員の手取り額を増やしやすくなります。

企業側にとっても社会保険料負担を抑えられるケースがあります。

4. 転勤や採用時の住居確保が容易になる

転勤者や遠方からの採用者に対して、会社が住居を手配できるため、人事異動や採用活動が円滑になります。

社宅制度の税務上の取り扱い

社宅制度で最も重要なのが税務上の取り扱いです。

従業員に対して社宅や寮などを貸与する場合には、従業員から一定金額以上の家

賃を受け取る必要があり、無償貸与や極端に低い金額で貸与した場合、給与課税の

対象になる可能性があります。

具体的には、賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っていれば給与として

課税されません。

賃貸料相当額とは

賃貸料相当額とは、次の(1)から(3)の合計額をいいます。

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント

(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル))/3.3(平方メートル))

(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント

(注) 会社などが所有している社宅や寮などを貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも、上記の(1)から(3)を合計した金額が賃貸料相当額となります。したがって、他から借り受けた社宅や寮などを貸す場合にも、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認することが必要です。なお、その社宅や寮が新築等であり、固定資産税の課税標準額が定められていないものである場合は、当該社宅等と状況の類似する住宅等に係る固定資産税の課税標準額に比準する価額を基に、賃貸料相当額の計算を行います。

具体例
(例) 賃貸料相当額が10,000円の社宅を使用人に貸与した場合

(1)使用人に無償で貸与する場合には、10,000円が給与として課税されます。

(2)使用人から3,000円の家賃を受け取る場合には、賃貸料相当額である10,000円と3,000円との差額7,000円が給与として課税されます。

(3)使用人から6,000円の家賃を受け取る場合には、6,000円は賃貸料相当額である10,000円の50パーセント以上ですので、賃貸料相当額である10,000円と6,000円との差額の4,000円は給与として課税されません。

まとめ

従業員社宅制度は、企業と従業員の双方に大きなメリットがある福利厚生制度です。

従業員は住宅費負担を軽減でき、企業は採用力向上や人材定着につなげることができます。また、適切に運用することで税務上のメリットも期待できます。

一方で、税法上の賃貸料相当額を無視して制度設計すると、給与課税が発生する可能性があります。

社宅制度は単なる福利厚生ではなく、人材確保や節税対策にもつながる有効な経営施策です。制度の内容を正しく理解し、自社に合った運用方法を検討してみてはいかがでしょうか。

監修 : 佐藤 拓真