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埼玉東部会計事務所 公式サイト

投稿日: 2026年10月28日

毎年秋になるとニュースなどで話題になる「最低賃金」。パート・アルバイトを雇用している会社では比較的意識されやすい制度ですが、実は最低賃金の確認が必要なのは時給制の従業員だけではありません。

月給制の正社員や契約社員、日給制の従業員などについても最低賃金は適用されます。

特に近年は最低賃金の引上げが続いているため、「以前は問題なかった給与額が、最低賃金の改定によって基準を下回ってしまった」というケースには注意が必要です。

今回は、最低賃金の基本的な仕組みから、月給制の場合の計算方法、最低賃金を確認するときの注意点まで、わかりやすく解説します。

1.最低賃金とは?

最低賃金とは、最低賃金法に基づいて定められている「会社が労働者に支払わなければならない賃金の最低額」です。

会社と従業員の双方が合意していたとしても、最低賃金より低い金額を設定することはできません。

最低賃金には、大きく分けて次の2種類があります。

①地域別最低賃金

都道府県ごとに定められている最低賃金です。

例えば東京都で働いている場合には東京都の最低賃金、埼玉県で働いている場合には埼玉県の最低賃金というように、原則として実際に勤務する事業場の地域によって適用される金額が決まります。

地域別最低賃金は、正社員だけでなく、パート、アルバイト、臨時社員、嘱託社員など、名称や雇用形態にかかわらず原則としてすべての労働者に適用されます。

②特定(産業別)最低賃金

特定の産業について設定される最低賃金です。

地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合には、金額の高い方を適用する必要があります。

そのため、自社について特定最低賃金が設定されていないかについても確認しておきましょう。

2.最低賃金は毎年確認しましょう

最低賃金は一度確認すれば終わりではありません。

地域別最低賃金は原則として毎年見直されており、例年秋ごろに改定されます。

各都道府県では、令和8年10月1日から12月2日までの間に順次、新しい最低賃金が発効する予定となっています。

ここで注意したいのが、新しい最低賃金の発効日は全国一律ではないという点です。

「10月になったから新しい金額」と単純に判断するのではなく、自社の所在地について「いくらになるのか」「いつから適用されるのか」の両方を確認する必要があります。

最低賃金が改定される時期には、給与計算ソフトの設定や雇用契約書の賃金額などもあわせてチェックしておきましょう。

(※埼玉県は令和8年10月1日から発効です)

3.最低賃金の対象になる賃金とは?

最低賃金を確認するときに、特に間違いやすいのが「どの給与を計算に含めるのか」という点です。

基本的には、毎月支払われる基本的な賃金が最低賃金の対象となります。

一方、次のような賃金は最低賃金を判定するときの計算から除外します。

・結婚手当など、臨時に支払われる賃金
・賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
・時間外労働に対する割増賃金
・休日労働に対する割増賃金
・深夜労働に対する割増部分
・精皆勤手当
・通勤手当
・家族手当

例えば、

「基本給は低いけれど、残業代を含めれば十分に最低賃金を超えている」

という判断はできません。

残業代など最低賃金の対象外となる賃金を除いて判定する必要があります。

4.時給制の場合の計算方法

時給制の場合は非常にシンプルです。

時給 ≧ 最低賃金

となっているかを確認します。

例えば、埼玉県に勤務する事業場の場合、適用される最低賃金は1,196円です。

時給1,200円 → OK
時給1,196円 → OK
時給1,100円 → NG

となります。

パートやアルバイトについては、最低賃金の改定時に現在の時給と新しい最低賃金を一覧表にして確認するとよいでしょう。

5.日給制の場合の計算方法

日給制の場合には、日給を1日の所定労働時間で割って時給に換算します。

日給 ÷ 1日の所定労働時間 = 時間額 ≧ 最低賃金

例えば、

日給 9,000円
1日の所定労働時間 8時間

の場合、時間額は、

9,000円 ÷ 8時間 = 1,125円

となります。

埼玉県(令和8年10月1日~)の最低賃金1,196円を下回ることになります。

「日給9,000円」という金額だけを見るのではなく、必ず所定労働時間で割って時間額に換算することがポイントです。

6.月給制の場合の計算方法

最も注意したいのが月給制です。

「正社員だから最低賃金は関係ない」と思われることがありますが、月給制の正社員にも最低賃金は適用されます。

基本的な計算方法は、

最低賃金の対象となる月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 = 時間額 ≧ 最低賃金

です。

例えば、

基本給 180,000円
職務手当 20,000円
通勤手当 10,000円
1か月平均所定労働時間 160時間

だったとします。

通勤手当は最低賃金の計算から除外するため、

180,000円+20,000円=200,000円

が最低賃金の判定対象です。

これを160時間で割ると、時間額は、

200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円

となります。

したがって、この従業員については「時給換算1,250円」として、その地域に適用される最低賃金と比較します。

7.「1か月平均所定労働時間」に注意

月給制の計算で重要なのが「1か月平均所定労働時間」です。

単純にその月の実際の勤務時間で割ればよい、というものではありません。

会社の年間休日などをもとに年間の所定労働時間を計算し、それを12か月で割って1か月平均所定労働時間を求める方法が一般的です。

例えば、

年間暦日数 365日
年間休日 125日
1日の所定労働時間 8時間

の場合、

365日-125日=240日

240日×8時間=1,920時間

1,920時間÷12か月=160時間

となります。

この場合、1か月平均所定労働時間は160時間です。

会社によって年間休日数や1日の所定労働時間は異なるため、他社の数字をそのまま使用するのではなく、自社の就業規則や年間休日カレンダーをもとに計算することが重要です。

8.最低賃金チェックでよくある間違い

最低賃金を確認するときには、次のようなケースに注意しましょう。

①月給制だから大丈夫と思っている

月給制であっても時間額に換算して最低賃金と比較する必要があります。

特に基本給が低く、各種手当が多い給与体系の場合には注意が必要です。

②通勤手当を含めて計算している

通勤手当は最低賃金の判定から除外されます。

総支給額では最低賃金を上回っているように見えても、対象となる賃金だけで計算すると下回っている可能性があります。

③残業代を含めて判断している

時間外労働の割増賃金なども最低賃金の判定から除外されます。

残業が多い従業員ほど給与の総支給額が大きくなるため、見落としやすいポイントです。

④パート・アルバイトだけ確認している

最低賃金は正社員にも適用されます。

最低賃金が大きく引き上げられた場合には、新入社員や若手社員など、比較的給与水準が低い正社員についても確認しましょう。

⑤最低賃金の発効日を確認していない

最低賃金は都道府県ごとに発効日が異なります。

新しい最低賃金額だけでなく、「いつからその金額になるのか」まで確認することが重要です。

9.最低賃金改定時には給与体系全体の確認を

最低賃金が上がったからといって、最低賃金を下回った従業員だけ時給を上げれば必ず問題が解決するとは限りません。

例えば、

新 人 時給1,150円
経験者 時給1,200円

だった会社で最低賃金が1,200円になれば、新人を1,200円に引き上げる必要があります。

すると、新人と経験者の時給が同額になってしまいます。

このような「賃金の逆転」や「賃金差の縮小」が発生すると、既存従業員の不満につながる可能性もあります。

最低賃金の改定は、単に最低ラインを確認するだけではなく、会社全体の賃金バランスを見直す機会として考えることも大切です。

まとめ

最低賃金というと「パート・アルバイトの時給」というイメージが強いかもしれませんが、実際には月給制や日給制の正社員などにも適用されます。

最低賃金は毎年改定されるため、「昨年確認したから大丈夫」とは限りません。特に最低賃金に近い給与水準の従業員がいる場合には、改定のたびに確認することをおすすめします。

監修 : 佐藤 拓真